クラシックレース第一弾の桜花賞、皐月賞が終わって一息ついたJRA。これから爽やかな天候のもと、天皇賞(春)、オークス、ダービーへと春のクラシックシーズンも最高潮を迎える。競馬と言えば、主役は当然サラブレッドであるが、馬主、調教師、厩務員……など様々な関係者がいて成り立っている。
そして、その関係者である人間側の主役は騎手であろう。よく、『人三馬七』などと言う人もいるが、いくら速い馬でも御者であるジョッキーがいないと、その能力は宝の持ち腐れに終わってしまう。特に、クラシックをはじめとするGⅠ競走などの大レースになればなる程、レースに占める騎手の要素は大きくなっていく。
過去の騎手勢力図
歴代騎手勝利数
1 武豊 4344 現役
2 岡部幸雄 2943
3 横山典弘 2877 現役
4 福永祐一 2546 現役
5 蛯名正義 2541
6 柴田善臣 2314 現役
7 河内洋 2111
8 増沢末夫 2016
9 藤田伸二 1918
10 中舘英二 1823
一目瞭然で武豊が断トツの勝利数を残している。この数字だけは今後も破られる事のない、正に金字塔と言えるだろう。ただ、競馬の草創期から昭和辺りに全盛期を迎えた騎手と、現在の騎手とではレース数の違いや、トレーニング方法や体調管理面での違い等から同一に比較するのが難しい一面もある。
例えば、昭和の名手で『ミスター競馬』と言われた野平祐二や、加賀武見、郷原洋行といった面々でも1300勝から1500勝台で終わっている。その後、天才と言われた福永洋一、岡部幸雄、柴田政人の時代を経て武豊の黄金期が幕を開ける。その武豊と共に一時代を築いたのがベストテンに名を連ねる横山典弘、蛯名正義、柴田善臣という面々。
その後、福永祐一の台頭と共に地方競馬出身の安藤勝己、小牧太、岩田康誠、内田博幸、戸崎圭太などのJRA移籍。更には外国人にも門戸が開放されてルメール、デムーロ両騎手が登場。JRA出身者だけでなく、地方競馬出身、外国人、更には女性騎手も続々と現れて、正に百花繚乱の様相を呈して騎手の勢力図も様変わりしてきている。
現在の騎手勢力図
騎手とは不公平な稼業でもある。他のレース競技の競輪、競艇、オートレース等は、クラスによって斡旋の多寡はあるものの一日のレース数はほぼ同様。しかし、競馬の場合は依頼によって騎乗が成り立つシステム。斡旋の多い騎手は12レース騎乗出来る反面、全く乗れない騎手も存在する。馬主、調教師などから信頼される騎手が強い馬に数多く乗れる事になる。
それは当然、成績に直結してきて全盛を誇った武豊に衰えが見えた昨今、福永祐一、戸崎圭太からルメール、更に川田将雅と目まぐるしい変遷をたどっている。競馬に付き物の落馬などの影響で浮沈はあるものの、ここ数年はルメール、福永祐一、戸崎圭太、川田将雅の4強と言っても差し支えない状況になっている。
その中でも、ここ数年八面六臂の活躍を見せたルメール。武豊の記録を破る年間215勝、年間最多のGⅠ8勝など記録面でもそうだが、馬券圏内の3着までに入る複勝率48.2%は特筆もの。ほぼ2回に1回は馬券に絡むという、ファンにとってはこれ以上頼もしい騎手はいないという、唯一無二の存在。
今後の騎手勢力図
しかし、そのルメールに異変。いつもなら一年の三分の一が経過したこの時点でリーディング争いのトップ独走。ところが、今年は海外遠征や新型コロナウイルスによる離脱があるにせよ現在4位。首位を走る川田から20勝遅れを取っている。それ以上に深刻なのが昨年末からの重賞26連敗。ルメールと言えば大レースでの勝負強さが代名詞なのに……。
騎手は技術、経験が物を言う職業だが、それと同時に体力面での強さも要求される。名手と言われた人も40歳を境に成績を落としていく場合が多い。もちろん人によりけりで、福永のように45歳で第一人者の貫禄を示す無類の勝負強さの名手もいる。ルメールは全盛期を過ぎたのか否か。この一点によって騎手の勢力図はガラリ一変する。
ともあれ何のスポーツでも、どんな名手でもある程度の年齢に達すればパフォーマンスが落ちるのは宿命。武豊53歳、福永45歳、ルメール42歳という名手に対して、リーディングトップの川田36歳、一昨年デアリングタクトで牝馬三冠の松山弘平32歳。いずれにしても、騎手の勢力図の転換期に近付いているのは紛れもない事実だろう。
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