大相撲秋場所は新横綱照ノ富士が13勝2敗で史上9人目の横綱昇進場所での優勝。先輩横綱白鵬不在の場所を一人横綱としての責任を果たして締めくくった。優勝を争ったのは平幕力士ばかりで両大関や三役勢との力量差が際立つ場所だった。今場所を振り返ると共に、来場所以降の角界の勢力図を占ってみる。
秋場所回顧・横綱、大関
予想通りに照ノ富士が新横綱、一人横綱のプレッシャーに押し潰される事なく13勝2敗で5度目の優勝を果たした。白鵬不在の中では大関以下の力士達の中では頭一つ抜き出ている。特に、右四つ、左四つにかかわらず、外四つでもとにかく回しを取りさえすれば負ける気はしないだろう。
今場所も中日までの8連勝は正に盤石の横綱相撲。ただ、9日目大栄翔にほぼ一方的に攻められて負けた辺りから、他を圧する力強さが薄れ長い相撲が増えてきた。古傷の両膝に疲れが溜まって圧力をかけられなくなったのが原因。また、徐々に動きも鈍くなって横に動く力士に苦戦する事が多くなった。
両膝の古傷は常に限界状態に近いと言われている照ノ富士。それでも、常に落ち着き払って自分の相撲を取り続ける精神的な強さは、大関から序二段まで下がってから巻き返した経験によるものか。今日、白鵬が現役引退を固めるというニュースが流れた。当分は一人横綱として膝の故障と戦いながら『照ノ富士時代』を築いていく事だろう。
それに比べて情けないのは両大関。正代は相変わらず単純な取り口で、立ち合いで圧力を掛けられた時は目を見張る強さだが、一旦止まってしまうと何の工夫もなく敗れてしまう。一方の貴景勝は先場所の首の故障からか、立ち合いから圧倒する本来の当たりが見られずに勝ち越しがやっと。カド番を脱してプレッシャーのなくなった来場所に期待を掛けたいが、突き押しだけでなく四つ相撲も考えない限りは横綱は無理だろう。
秋場所回顧・奮戦平幕力士
不甲斐ない上位陣の代わりに最後まで優勝を争ったのが平幕の実力者達。妙義龍は34歳とは思えない速くて力強い出足で、千秋楽まで優勝争いに残って、照ノ富士一強ムードに流れそうな土俵を引き締めてくれた。特に、14日目の正代戦の鋭い出足は全盛期を彷彿させるような見事な相撲で、来場所以降の活躍も期待させられる。
最後の2連敗で敢闘賞受賞を逃した阿武咲。一時は貴景勝と肩を並べて次代を担うホープと期待された逸材。故障が原因で番付を下げて低迷が続いていたが、今場所は鋭い当たりからの突き押しで圧倒。5敗の内3つは変化によるもので、まともにぶつかった相撲は外連味のない堂々とした取り口で一服の清涼剤。貴景勝と違って四つ身になっても勝機を見い出せるのは魅力。
久し振りに存在感を示したのが東前頭11枚目まで番付を下げた遠藤。相変わらずの巧さを見せた多彩な技で白星を重ねて11勝。粘り強い足腰で立ち合い圧力を掛けられても一方的に負ける事はなく、相撲の流れの中でのいなしや駆け引きは魅力たっぷり。まだ、30歳と老け込む歳ではない。来場所以降は上位での活躍を期待したい。
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来場所以降の勢力図
秋場所千秋楽の翌日、恒例の優勝者のインタビューと共に流れたのが白鵬引退のニュース。その横綱らしからぬ汚い取り口には賛否両論あったものの、実績的には間違いなく不世出の横綱。これで、否が応でも照ノ富士の独壇場は当分続く事になりそう。ただ、心配なのは照ノ富士の両膝。何かの拍子で致命的な怪我になりかねないのが、一発勝負の大相撲の世界。
今の大関以下の力士達では照ノ富士に何かがあった場合、当分の間横綱不在の場所が続くのは否めない。何故ならば、例え強い横綱がいなくなっても、その代わりに安定した成績で優勝争いを繰り広げられる力士が皆無だからだ。照ノ富士にも劣らない体格の力士もいるし、魅力ある体幹や柔らかい足腰の力士もいる。ただ、足りないのは精神力に他ならない。
それでも、白鵬全盛の頃にも次々と横綱は現れた。番付の上からも大関正代、貴景勝。三役を守った御嶽海に明生。これらの上位力士には角界の看板としてより一層の精進を期待したい。あとは、次代を担う若手の成長に望みを掛けたい。秋場所番付順に、豊昇龍、若隆景、琴ノ若、阿武咲の4人の躍進に期待する。当然、彼らに刺激を受けて化学反応を起こす他の力士の台頭も待ちたい。
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